「言われた通りにやってください」では、うまくいきません。医療は“あなたの人生”と“あなたの選択”の上に成り立つもの。当院は、患者さんと一緒に最適解を選ぶ“アドヒアランス(adherence)”を診療の土台にしています。
現在の歯科医療の現場では、歯科医療従事者から治療の選択肢や予防法などの一方的な説明がなされ、それに従わない場合には、困った患者のように扱われてしまうケースがあるようです。
これは医療において正しい形とは言えないのではないでしょうか?
当院はご本人の意思や考え、バックグラウンドに配慮をして様々な選択肢をメリットデメリットを説明し個人の選択を尊重いたします。
その中には治療をしないというものも含まれデメリットを納得の上でできる限りの支えとしての医療提供を心掛けています。
個人の意思を無視した医療では本質的に患者さんは救われません。
アドヒアランスって何?(WHOの定義)
WHOはアドヒアランスを「患者さんの行動(服薬・食事・生活習慣の変更など)が、医療者と合意した推奨とどれだけ一致しているか」と定義しています。ここで大事なのは“合意”です。
上からの指示ではなく、話し合いによる合意が前提です。WHO
さらにWHOは、アドヒアランスは個人の努力だけでなく、医療制度・治療内容・経済状況など複数の要因で左右されると整理しています(5つの次元:社会経済・医療システム・疾患・治療・患者関連)。
つまり「守れない患者が悪い」ではなく、「守れる仕組みを一緒につくる」視点が必要です。PMC
WHO報告のレビューでも、アドヒアランスを高める取り組みは、特定治療の改良以上に健康成果を大きく改善し得るとまとめられています。PMC
「コンプライアンス」と「アドヒアランス」の違い
観点 | コンプライアンス(compliance) | アドヒアランス(adherence) |
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関係性 | 医師が決め、患者は従う | 患者と医療者が合意して決める |
目的 | 指示の“遵守” | 生活にフィットする実行可能な計画 |
失敗の捉え方 | 「守らない患者の問題」になりがち | 障壁を一緒に特定し、計画を調整 |
手法 | 一方通行の指導 | 共有意思決定(SDM)・相談型支援 |
根拠 | 概念として古典的 | WHO・各国機関が推奨する人中心の医療 |
コンプライアンス中心の問題点
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“言われた通り”が前提だと、患者さんの価値観・生活事情が置き去りになり、継続が難しくなります。PMC
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守れないときに**“患者のせい”**になりがちで、相談しづらい空気を生みます。PMC
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結果として、健康成果や安全性が下がる可能性があります(WHO報告の総括)。PMC
当院の診療方針:人中心(People-centred)× 共有意思決定(SDM)
WHOは「人中心の統合ケア」を各国に呼びかけ、人々のニーズと好みを尊重し、疾病でなく“人”を起点にサービスを組み立てることを強調しています。世界保健機関
また、SDM(共有意思決定)は患者さんと医療者が、エビデンスと価値観を持ち寄って最適案を一緒に選ぶプロセスと定義されています。公的機関(AHRQ)もこの考え方を明確に示しています。AHRQ
日本でも、厚生労働省のガイドライン等が**“適切な意思決定支援”やACP(アドバンス・ケア・プランニング)**の重要性を示しています。厚生労働省
まとめ
医療は「従う」ものではなく、「一緒に作る」もの。WHOが示す人中心のアドヒアランスに基づき、当院は共有意思決定であなたの治療を支えます。独りよがりの医師主導にNO。あなたの人生に合う医療を、ここから。
参考
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World Health Organization. Adherence to long-term therapies: Evidence for action (2003). 定義と総論。WHO Apps
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Chaudri NA. Adherence to Long-term Therapies Evidence for Action(WHO報告レビュー、要点:5次元・介入効果)。PMC
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WHO. Framework on Integrated, People-centred Health Services (IPCHS)(人中心ケアの考え方)。世界保健機関
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AHRQ(米国公的機関). About Shared Decision Making(SDMの定義)。AHRQ
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厚生労働省. 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン ほか、意思決定支援とACP。厚生労働省+1