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むし歯の治療方法による予後の違いについて

むし歯シリーズ第3回目です

 

むし歯の治療方法(精密?)(接着?)や材料(セラミックなど)でその後にむし歯が再発するかは明確な差がない?

 

 

1 むし歯はうつる感染症ではない 虫歯菌という特定の菌がいるわけではない

2 歯ブラシやフロスなど汚れを落とす行為はむし歯の予防効果が高くない

3 むし歯の治療方法(精密?)や材料(セラミックなど)でその後にむし歯が再発するかは明確な差がない

4 むし歯の取り残しは悪いわけではない むしろ状況次第で残すことが推奨されている

5 むし歯の予防はフッ化物(フッ素) フッ化物の使用方法は何でもよい訳じゃない

6 個人のむし歯のなりやすさの指標は過去のむし歯の経験(細菌検査などはエビデンスが低い)

7 定期クリーニングの直接的な虫歯予防効果は大きくない

8 むし歯の予防は自分が正しい知識をもって毎日の積み重ねを変えていくしかない

 

についてですね。

 

結論から言えばむし歯(根の治療ではなく神経が生きている状態)の治療法による予後の差はあまりありません

 

例えば保険での治療や自費での治療では材料が違ったり接着剤が違ったりします。

しかし、現時点でわかっていることは、「接着が良くしているかしていないか?」「材料がセラミックかレジンか金属か?」

「むし歯の除去をどのようにしたか?」 「むし歯をどのようにとるのか?」などの違いによるその後の予後には明確な差はないということです。

それはなぜか?むし歯というものは感染症ではないと以前に書きましたが、むし歯は複雑に絡み合う多因子の結果、歯が溶けてしまう状態が継続的に起きていることの結果だからです。逆に言えば継続的に歯がとけない状態が出来ればむし歯は進行しません。

つまりどんな材料や接着を行ってもむし歯が出来る状態に変化がなければ、むし歯ができたそこはまたむし歯になるのです。

 

 

以下にその根拠を書いてみます なるべくエビデンスレベルの高い論文を用いています

 

歯科患者の修復治療のためのラバーダム隔離

Rubber dam isolation for restorative treatment in dental patients

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33998662/

Cochrane Database Syst Rev

 

. 2021 May 17;5(5)

著者の結論: このレビューでは、歯科直接修復治療でラバーダムを使用すると、6 か月後にコットンロールを使用した場合と比較して修復の失敗率が低くなる可能性があるという、確実性の低い証拠がいくつか見つかりました。他の時点では、証拠は非常に不確実です。さまざまな種類の修復治療におけるラバーダムの使用の影響を評価する、さらに質の高い研究が必要です。

 

この論文は接着を口の中でしっかりするためには湿気や水分が少ないほど良いためにラバーダムという器具が特に保険外の治療で使用されます。そのラバーダムが他の水分や湿気を除去する方法に比べ予後がどうであるか?について調べたものです。

結論は上記のように確実性の低い証拠が見つかる程度にとどまっています。

複雑な要因の結果であるむし歯についてラバーダムがそこまで大きな因子になるかは個人的にも疑問があります。

 

 

 

 

永久歯におけるさまざまな接着戦略と修復材料の二次う蝕リスク:体系的レビューとネットワークメタ分析

Secondary caries risk of different adhesive strategies and restorative materials in permanent teeth: Systematic review and network meta-analysis

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33259888/

 

結論: さまざまな接着戦略や修復材料を比較するランダム化試験のデータは非常に少ない。対象研究の観察期間中、材料間の差は限られていた。得られた順位は慎重に解釈する必要がある。

 

 

様々な接着方法や使用される材料があります。しかし、それらの材料や方法での差はわずかであると結論付けられています。

 

 

アマルガムとレジン複合材による後方修復物の寿命: 体系的レビューとメタ分析

Amalgam and resin composite longevity of posterior restorations: A systematic review and meta-analysis

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26116767/

 

結論: このレビューの結果は、アマルガム修復と比較した場合、後歯の複合樹脂修復は依然として寿命が短く、二次齲蝕の数が多いことを示唆しています。破損に関しては、追跡期間に関して 2 つの修復材料の間に統計的に有意な差はありませんでした。

 

 

これは、今、ネットなどで悪者にされているアマルガムと呼ばれる銀色の詰め物と、保険、保険外での両社の治療でもよく使用されるレジンを臼歯(奥歯)の比較をしたものです。

驚くべきことにアマルガムの方が予後が良くなっています。アマルガムを理由なく除去する意味はあまりありません。

アマルガムは金属アレルギーなど体に悪いという情報が散見されますがそれも極端な情報であり、多くの人にとっては全くと言ってよいほど有害ではありません。 過去記事

 

Interventions for treating cavitated or dentine carious lesions

空洞または象牙質の齲蝕病変の治療介入

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34280957/

 

著者の結論: CR と比較すると、乳歯列では HT と SE、永久歯列では SE と SW の失敗数が少ないことが分かりました。ほとんどの研究では、サンプル サイズが小さく、失敗数が限られているため、バイアスのリスクが高く、推定値の精度が限られていることが示され、ほとんどの比較で証拠の確実性が低い、または非常に低いと評価されました。

 

比較された治療法 以下

 

う蝕組織の「完全な」除去、すなわち非選択的除去と従来の修復 (CR)

う蝕組織をほとんどまたはまったく除去せず、選択的う蝕組織除去 (または選択的掘削 (SE))

段階的う蝕組織除去 (SW)

シーラント材を使用したう蝕病変の封鎖

成形済み金属冠を使用した封鎖 (ホールテクニック、HT)

非修復性う蝕制御 (NRCC)

 

 この論文ではむし歯を完全に除去する方法以外の方法が予後が良い可能性が示されています。

 

セラミックに関しては私が検索する限りむし歯の予後に関するエビデンスレベルの高い論文は見つかりませんでした。

 

まとめると現在のエビデンスでは治療方法や材料などがむし歯の予後に対してどれが良いとは強く言えないということです。

 

材料が特別だから?接着が特別だから?特殊な技術だから?

顕微鏡下でむし歯を除去することが良いように情報として流れていますがそれが予後にどれほど多く関わっているかは現時点ではエビデンスは強くありません。これは以前に顕微鏡治療に関するブログでも書きました。

 

 むし歯は複雑なバックグラウンドの結果です。今現在むし歯を進行させない、予防できるエビデンスの強いものはフッ化物の適正使用のみです。方法や材料ではないのです。