まず離乳時期などには様々な考え方もあり、授乳や離乳時期や方法などは個人のバックグラウンドにより選択されるべきであり現在のあなた個人の状況を否定するものではないことをご理解ください。
また、今回の内容は歯科医学的にみて以下に書き示す側面があることを知って頂き、育児書などを含めて見聞きしたものが絶対的なものではないので、その内容にあまりにも縛られ育児に追い込まれる方が減ってほしいという願いを込めて書いています。
当院のスタンスはいつもこれです。
「医療とは個人の負担を最低限にして無理をせずなるべく楽をしていいんだよと背中を押すものでありたい。そのためにエビデンスを知って頂き個人で取捨選択をして頂きたい。」
「医療は人を追い込むものであってはならない」
育児に疲れている方に根拠の強くない手間を増やしてさらに追い込んではなりません。
育児をしている皆さんに知って頂きたいことを書いていきます。
さて、少し余談ですが小さなお子さんを虫歯にさせないために毎日毎食後に歯ブラシとフロスをしましょうと見聞きしたことはありませんか?
これは実は虫歯の予防としてはあまり根拠は強くなく予防効果が高いとは言えない方法です。
次に小さなお子さんと食器などを分けて口移しなどをやめないと虫歯菌がうつって虫歯になると見聞きしたことはありませんか?
実はこれも根拠に乏しく現代では否定的に考えられています。
では本題の離乳時期について。
最初にも書きましたが離乳はこの時期ではならなくてはいけないという訳ではありません。
現在よく見聞きする時期は1歳頃に離乳をしましょうということではないでしょうか?1歳半検診で離乳が出来ていないと強く指導を受けたというケースも聞いたことがあります。
確かにそれも一つの考え方であり目安であるのだと思います。
しかし、それを絶対的なものと考えて負担に感じてらっしゃる方がいたら少し考えてみて頂くきっかけになればと思います。
歯科医学的に見て離乳時期はどうなのか?(今回の授乳離乳は母乳を対象としています。母乳とミルクに関してはまた別の機会に)
長い間授乳をしていると虫歯になるからやめたほうが良いと聞いたことがありませんか?
如何でしょう。
これは結論から言うと授乳期間が長いと虫歯のリスクが高くなるとは言えません。
2021年11月に出されたイギリス公衆医学ガイダンスには以下のようにあります。
乳児は生後6か月程度は母乳のみで育てられるべきである。入手可能なエビデンスは、生後12カ月までの母乳育児は虫歯のリスク低下と関連しており、乳児用調製粉乳と比較してある程度の保護を提供する可能性があることを示している。
※ガイダンスより抜粋
つまり一歳までは母乳を飲んでいたほうが虫歯のリスクが下がる可能性があるのです。
またWHOはむし歯の観点だけでなく肥満や栄養失調、その他の疾患から守るために2歳までもしくは2歳以上までの授乳(他の食事と併用)を推奨しています。
また歯ならびに関しても授乳との関係が指摘されています。
期間はむし歯予防と同じく6ヶ月は母乳だけで育てた方がよい可能性があり、できれば12ヶ月はそれを継続(その他の食事法と併用)、ということになっています。
上記のように歯科から見ると授乳を絶対に1歳で止めなくてははならない理由はあまりありません。またWHOもその他の健康などのことを考えて1歳で止めなくてはならないということは書いていません。
確かに1歳から2歳の間授乳を続けると虫歯が増えたという論文もありますが、それは1歳頃から固形などの食事が増えその糖質が関係してるのだろうと捉えられているようです。
まとめ
歯科医学的に見て授乳を1歳などで強くやめましょうという理由はありません。むしろ2歳以上まで続けられると良い可能性もあります。
歯科以外の理由でもWHOも2歳以上の継続を薦めています。
しかし、これらはあくまでも推奨でありそれよりも早くやめることが良くないと言っている訳ではありません。早くやめてもむし歯にならない可能性もありますし歯ならびも問題ない可能性も十分にあります。
個々の生活などバックグラウンドやお子さんの発育や特徴に合わせて、根拠の強くない何かにしばられず不安にならずに楽しい楽な育児を出来るようにしていただきたいです。