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抜歯直後の骨が無い場所に骨を作りインプラントを埋入した症例(ソケットプリザベーション)

ソケットプリザベーションという治療法をご紹介いたします。

通常歯は骨の中に植っています。抜歯をすると骨に大きな穴が開いてしまいます。そのままにしても治癒の経過により骨はある程度戻ってきて穴を塞いでくれます。しかし歯の頭側(咬む側)の高い位置にある骨は吸収して失われてしまいます。

 

それを防ぐために抜歯直後の骨の高さがあるうちに内部に補填材(アパタイトやその他)を入れていきます。

すると骨の吸収は少なくなり骨が維持されます。

そのためその後にインプラントを埋入出来る可能性が高くなります。

 

実際の症例です。右上の奥歯に大きな歯の根の炎症があり支える骨が大きくなくなってしまった状態に対して抜歯と同時に骨を作るための骨補填材を入れる手術を行いました。通常だとインプラントが不可能な可能性がある状態です。

※抜歯直後でも数ミリの骨が存在しインプラントをしっかりと固定出来る場合では抜歯即時インプラントという方法を選択します

(こちらにつきましては別記事に後日)

初診時にメリットデメリット、起こりうる可能性をしっかりとお話をした上で了承頂き行いました。


右上の大臼歯のレントゲン画像です。赤い線は上顎洞という鼻の奥の空洞の底の壁(上顎洞底)です。歯の根の先に黒い影(黄色線内)があり上顎洞底部の連続性が失われています。上顎洞への炎症の波及の可能性もあるため抜歯と診断しました。

ご本人は鼻閉感など自覚症状はありませんでした。

抜歯と同日に骨補填材(アパタイト等)を抜歯部位の穴の中にいれています。黄色い線で囲われた場所です。補填材を入れないと骨はかなり少ない状態でこのままではインプラントは出来ない状態です。補填材の上にコラーゲンなどの吸収性のもので封鎖し糸で縫合してあります。

一週間ほどで糸が取れその後4か月ほど慎重に経過をみます。

5カ月程度経過した状態です。歯を抜いた根っこの形に補填材が確認できます。(上記黄色線内)

6カ月ほど経過しました。CT(断層撮影)により十分な骨の幅と高さが認められたためインプラントの埋入手術を行います。


今回は元々の骨(抜歯後のご本人の骨)が少なかったために6カ月経過後に手術を行いました。

左の画像が初診時。右がインプラント埋入直後です。しっかりとインプラント全体が骨に覆われています。


インプラント埋入手術から約5カ月後に歯茎の下に埋もれていたインプラントの上部を出す手術を行いました。(左画像)

中央画像の補填材を抜歯した穴に入れた直後や右画像のインプラント埋入直後の画像で確認される歯の根の輪郭を感じさせる骨の色の違いや線は5か月後の写真では認められません。


下の写真はインプラントにセラミックの歯を入れた(被せ物を取り付けた)状態です。

下段の写真は骨を維持する手術直後との比較です。

 

隣の歯との歯茎もなく健康な磨きやすい形態の被せ物が入りました。色合いや形で自然な本物の歯のように入りました。



ソケットプリザベーション※2024年一月より料金が変わりました

 費用 補填材                     20000円税込み

    吸収膜など                   20000円税込み

当院ではインプラントを予定の場合にのみソケットプリザベーションを行っておりその際には材料代のみとなります

※費用は骨の欠損具合で材料(補填材)が多くなると変わります

 

今回の症例

治療期間トータル約1年

ソケットプリザベーション 4カ月~5カ月

インプラント埋入後    5カ月程度

費用はソケットプリザベーション材料代          40000円税込み

インプラントCT検査 手術 被せ物(セラミック) 全て込み 350000円税込み

トータル                        390000円税込みとなります

※インプラント費用はその方の状態により数種メーカーがあり変わります

 

ソケットプリザベーション

 

メリット

抜歯などにより骨が大きく欠損しているケースに骨を作ることが出来る

抜歯と同時に行うため侵襲を与える回数が少なく侵襲自体も抜歯と同等

 

デメリット

保険適応ではないため高価

全てのケースで骨が必ず出来るとは言えず適応外の場合もある

治癒過程で感染を起こす可能性が無いとはいえない

抜歯と同程度ではあるが痛みや腫れが一時的に出る可能性がある

 

リスク

感染を起こした場合にはそれに対する処置が必要になる可能性があり骨も出来ない場合もある

個々の全身疾患によっては行えない可能性がある

 

※インプラントのメリットやデメリットの詳細は別記事に記載予定