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トップアスリートのパフォーマンスと虫歯を考える

夏になり暑さが激しい日々が続いております。
オリンピックでは連日白熱した競技が繰り広げられメダルも多く獲得していますね。コロナ禍で落ち込んだ心を明るくしてくれます。

さて今回はスポーツと虫歯です。

スポーツと言えば水分補給にスポーツドリンクが使われています。
近年では熱中症予防としてもスポーツドリンクがよく飲まれていますね。
熱中症は命にも関わる大変危険なものです。

熱中症予防のためにとスポーツドリンクをよく飲まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかしこのスポーツドリンクには糖質が多く含まれていて虫歯のリスクが高くなったり、糖尿病のリスクなども指摘されています。

簡単に言えば、熱中症予防に必要なものは水と塩分です。糖質は熱中症予防では必須ではありません。
とある活動の中で仲良くして頂いている中田先生が素晴らしい記事を書いてらっしゃいますので詳しくはこちらをご確認ください。中田先生は他にも多くの歯科にかかわる記事を書いてらっしゃいますので興味がある方は是非。


さて、今回はアスリートの方への記事です。
私も中高と弱小ながら柔道と水泳を行ってきました。当時はそこまでスポーツを科学的に捉えて行う状況ではなく、練習中などに「水を飲むとバテる」と言われ飲んでも数回だけの水道の水のみでした。
現代の考え方や気象のことを考えれば水分補給は頻度がもっと高いことが望ましいですね。
今になってみれば、水道水を飲むことは虫歯や糖尿病などのリスクから見れば良かったことかもしれません。

さてスポーツのパフォーマンスから考えてみるとどうなのか?
当院も場所柄アスリートの方々がいらっしゃいます。トップアスリートの方もいらっしゃいます。
その様な方々は何よりもスポーツパフォーマンスを優先し全ての生活をそれに合わせています。
その様な方々に

「虫歯のリスクが高くなるからスポーツドリンクをやめましょう」

と専門家としていえるのか?

私の答えはNoです。

中田先生の記事でも触れてらっしゃいますがスポーツ選手は虫歯が多い可能性があります。それはスポーツドリンクの影響がないとは言えないでしょう。
また、歯が虫歯になれば痛みや咬み合わせの崩壊などによりパフォーマンスが低下する可能性もあります。
では何故Noなのか?それは以下にあります。



2016年に出されたアメリカスポーツ医学会等によるポジションペーパーです。
 
この中でアスリートは炭水化物(糖質含む)を摂取することによりパフォーマンスが向上することが触れられています。
競技の内容などにより摂取する目安なども表にされています。

つまり、糖質を摂取することを安易に制限するとパフォーマンスが低下する可能性があるのです。

個人差もありますがトップアスリートの方は日常から様々な事に神経を使い、研ぎ澄まされた状況で競技を行います。また日々の練習の中でもよりパフォーマンスが高くなるために努力を重ねています。その状況では些細な変化でさえも本来のパフォーマンスが出せない可能性もあります。

我々歯科医師の立場から考えれば頻繁な水分補給の中に糖質が含まれていることは虫歯のハイリスクであることは間違いありません。
しかし、様々なバックグラウンドの中では個人個人優先する事項は変わります。
では、アスリートの方々がパフォーマンスを失わずに虫歯のリスクを減らす方法は何か?と問われれば今現在はっきりとした指針は出ていません。

だからと言って我々歯科医師は諦める訳ではありません。
アスリートの方個人個人の競技や練習の現状、日々のカロリーをどれほどスポーツドリンクから得ているのか?
それらのカロリー摂取を口の中に滞留性の低い固形物に置き換える。固形物の一回の摂取カロリーを考え摂取頻度を減らせれば、スポーツドリンクからのカロリー摂取頻度を減らせるのではないか?スポーツドリンクが減った分の水分補給や電解質補給をどうするのか?


また予防面も考えます。フッ素による日々の虫歯予防の状況がどうなのか?さらなるフッ素を個々の特徴に合わせて組み込むべきなのか?

上記は一例にすぎませんが個人個人の状況に合わせたパフォーマンスと虫歯予防のバランスを考えています。もちろん虫歯は複合的な要因による結果なので完全に予防することは出来ない可能性もあります。
しかし、今現在よりもリスクは必ず減ります。
アスリートの方々にこのようなアドバイスを行うには、より深い虫歯の理解や予防のためのフッ素の理解が必要です。フッ素も安易に使用をしても正しく使用されなければ効果も薄くなります。

アスリートの皆さんは、長いとは言えない競技ができるピークに全てをかけてらっしゃいます。それを邪魔をする歯科医療であってはなりません。
しかし、皆さんは引退後も人生は長く続きます。その後の人生をお口のトラブルで大変な思いをされないように少しでもお力になれたらと考えています。